Cheap Trick @ 横浜ベイホール

1999年10月11日。Cheap Trick来日公演の初日である。この日の公演は横浜BAY HALLで行われた。関東地方はこの日以外にあと2回ブッキングされており、それぞれ渋公とサンプラなのだが、わざわざ僕はこのチャリンコで行ける2会場を蹴って、あのクソ遠い横浜BAY HALLを選んだのだった。理由はカンタン。ここだけがクラブだからだ。言うまでもなくCheap Trickアリーナロックである(であった)。Cheap Trickといえば武道館、武道館といえばCheap TrickというほどAT BUDOKANは有名である。しかし、だからこそ逆に言えばAT BUDOKANなバンドをクラブサイズで観られるなんて幸せなことだと思うのだ。AEROSMITHは今や4大ドームをソールドアウトにするようなバンドだが残念ながらクラブサイズで観ること能はずだもんな(多分FC入ってても難しい)。そんなふうに気持ちを引き締めて、僕は横浜へと向かったのであった。


しっかし、噂に聞いていたとおり遠いね、BAY HALLは。ホントどーしよーかと思った。石川町から徒歩25分ということだったが、実際には40分ぐらいかかってしまった。そして、やっと会場にたどり着いてみると、いるわいるわCheap Trickファン。もちろん言うまでもなく老若男女様々。そりゃそーだよな、僕が生まれる前から存在してるバンドだもんな。で、BAY HALL内部に潜入し、しばしBAY HALLそのものを観察。まず、ロッカー。少ない。バツ。次、トイレ。汚い(新しいのに、なんで?)。バツ。そして肝心のホール内。狭い。まあ、良いんじゃないでしょうかね。ちなみにQUATTROみたいに柱があったりします。ひととおり観察を終えると僕はかなり早々にAブロック内にスタンバった。ウィスキーの匂いがプンプンしてる。さすが年齢層が高い証拠か?


そして、18時10分、ステージが暗転し、およそ10分遅れでショウはスタート。「ン、タタン、ンッタン、スッタタン、スッタタン」(このニュアンスわかってもらえる?)とバーニー・カルロス<dr>のタイコが聞こえてきて・・・・・1曲目はいきなりI Want You To Want Meだ!僕的にもすごくうれしかったが、往年のファンにとっては「キャーーーッ」ってカンジだろう。っていうか、実際そうだった。日本で生まれた、という伝説の残っている、この曲のサビ部分のバンドとオーディエンスの掛け合いをいきなり体験することとなった。オールドファンも若いファンも皆コールアンドレスポンスを楽しんでいる。Cheap Trick最高だ。横浜まで来て良かった。この時点で、僕は既にそう確信していた。
1曲終わったところで、リック・ニールセン<g>がMCを取る(やっぱり、しゃべるのはこの人なんですネ)。また日本に戻ってこられて非常にエキサイトしている、という旨のことを話して、ショウ続行。かつては王子様と呼ばれていたらしいロビン・ザンダー<vo,g>も今や46歳。その端正な顔にもだいぶ皺が目立つように。でも、ヴォーカリゼーションに関しては素晴らしかったなあ。レコードで聴かせてくれるのと同じ歌声。さすがに、涼しげに、とは言い難かったが、っていうか、かなり全身の力を振り絞って歌っているように見えた。それが逆に感動を呼ぶ。リックもそんな彼を評して、世界最高のシンガーを紹介できて嬉しい、と言っていた。トム・ピーターソン<b>にも触れておこう。3rdアルバム収録の、彼がリードヴォーカルを取るナンバーが披露され、彼もフロントに立ち、やっと姿がよく見えた。よく言われるように、彼もロビンとともにバンドのヴィジュアル面を担っていたわけだが、この人は今もホントにカッコイイ。素直にそう思った。まあ、音楽的には、この曲は別に好きじゃないんであんまり嬉しくなかったけど。


セットリスト的には今年3月にリリースになったライヴ盤MUSIC FOR HANGOVERSの選曲に似ていたわけである。つまり、僕の大好きな1stからの曲が多かった。特にTaxman, Mr. Thief。この曲を演ってくれたときは超嬉しかったな。イントロのリフが始まった瞬間、周りは普通に歓迎してて、僕だけ大喜びで歓迎。超名曲だと思う。ちなみに以前僕がDIZZY MIZZ LIZYYの曲の元ネタと書いたのはコレです。あと、MUSIC FOR HANGOVERSの傾向と違った点として特筆すべきは、88年発表のLAP OF LUXUARYからのナンバーが3曲も演奏されたことだろう。このアルバムは外部ライターを迎えた、いわゆる80年代産業ロック大爆発の作品で、メンバー自身キャリアのなかでも大嫌いなものと公言しているほどなのだ。増田っちのライヴレポートでは、このアルバムのNo.1ヒットバラードであるThe Flameを別アレンジで演る、と書いてあったが、この日はThe Flame以外にもあと2曲披露されたのである。特にバラードThe FlameとGhost Townはアレンジは大胆に変えられていたけれども、メロディの素晴らしさは完璧に再現されホントに感動してしまった。こんだけファン歴の浅い僕でさえ、こんなに感動したんだから、往年のファンの方々にとっちゃあ、この場面は超ハイライトだったことだろう、きっと。


ショウも終盤に差し掛かったところで、No.1ヒットSurrenderが大炸裂。ここで初めて、普段の我々が行くようなライヴのノリに。オールドファンも若い子達も一緒になって大合唱。うん、Cheap Trick最高だ!その後はDream Policeなど、もうコレっきゃないだろ、という強力ナンバーを応酬し、アンコールにもきちんと応え、ハードロックチューンHello Thereをもって、約80分のステージを終了した。その後もリック・ニールセン名物「ピックばらまき」の残骸を探し出そうと躍起になってるファンがステージ前にへばりつき、ホール内の興奮はしばらく冷めない状態だった。


ホントに良いロックショウを見せてもらったといったカンジである。Cheap Trick健在を印象づけるライヴであった、からこそ最新作からのナンバーも1曲ぐらい演ってほしかった、というのは贅沢すぎるかな?