2022年総括 その1

<Albums>

1.black midi 『HELLFIRE』
Hellfire
個人的には前作をそんなに評価しなかったのよね。10枚選出してギリ10番目ってなカンジで。その前作のなかで一番気に入ったのはやっぱりリードトラックだった「John L」なんだけども。その「John L」を手がけたプロデューサーが今回はアルバム全体をプロデュースしてるんだそうで。それが理由なのかそうじゃないのかわからないけど、「John L」バリに気に入った曲が満載のアルバムだったわ。特に序盤、「Welcome To Hell」までの流れが完璧すぎて圧巻。
Mattは完全に脱退しちゃったのかしらね。でも、今回もサポート2名の働きが素晴らしいじゃないのよ。特にサックスは超重要。だからこそ、来日公演もサックス込みで観たかったというのが本音だったりする。


2.THE BOO RADLEYS 『KEEP ON WITH FALLING』
KEEP ON WITH FALLING
オレは完全に後追い世代なので、新作をリアルタイムで聴くこと自体が初めてなんだけども。ってか、再結成の報が届いたときMartin Carrはいないということが併せて伝えられて(往年のファンも)みんなズッコケたと思うけどね。メインソングライターいないんだもんね。でも、フタ開けてみたらイイ曲ばかりで驚いた。珠玉のメロディ、変わらないSiceの歌声。これ以上何を望むか。
「凄い音楽」って評価軸と「良い音楽」って評価軸が別々に存在してる気がするし、AOTY的な土俵では前者が物を言いがちなのかもしれないけど、後追い世代のオレが真っ先に後者の評価軸で本作を称賛したいって思ったんだよね。


3.宇多田ヒカル 『BADモード』
【オリジナルステッカー付】 宇多田ヒカル BADモード 【 生産限定盤 】(2LP)
世界的な成功という意味では過去最高到達点かね。本当は個人的な趣味でいえば、3年前の既発曲とかまで含めてアルバム化されるより新録の楽曲をたくさん聴きたい派だけど、まあ、このクオリティなら文句も言えなくなる。基本的には、時系列的に言って最近録った曲ほどイイっていう印象なので、次回作も最高クオリティになるんだろうなと。
でも、どちらかといえばライヴ活動の動きのほうに興味があるかな、今は。というのも、本作のオマケとして収録されたAIR STUDIOSでのライヴがめちゃくちゃ良かったからね。アルバム本編より充実してると感じるぐらい。


4.iri 『neon
neon [通常盤] [CD]
彼女の作品に駄作はひとつもないと思っていて、その意味で高値安定なんだけど、今回は本当にネクストレベルに達した一枚だと思った。アルバムタイトルとアートワークはサナギを意味してるらしいんだけど、「これでサナギなのかよ、もうバタフライじゃんかよ」って思える会心作。シングル単位の既発曲も入ってるし、なんなら前作EPの収録曲まで入ってるけど、寄せ集め感は皆無でアルバムとしての構成がお見事。ラストを「The game」みたいな曲で終わらせる心憎さまで含めて完璧だわ。


5.SOUL GLO 『DIASPORA PROBLEMS』
Diaspora Problems
TURNSTILEにどうしても興味が持てないオレも、コレにはすぐ飛びついた。EPITAPHからのリリースだし、完全にマスに聴かせることにもフォーカスしたアルバムだと思う。でも、セルアウトじゃない。ハードコアパンクとしての強度も相当なものだから。音楽的造詣の深い人たちのようで、本作にまつわるインタビューも興味深く読めたわ。


6.SUPERCHUNK 『WILD LONELINESS』
Wild Loneliness
「ゲスト参加多数」が本作のキーワードだから、ライヴで聴かれる音楽性とは違うけど完成度はピカイチ。Mac自身もお気に入りとしてタイトルトラックを挙げていたけど、オレもそれが一番好きだなあ。サックス切り込んでくる瞬間が鳥肌もの。その他にもイイ曲目白押しで「やっぱ、強いなあ」と思わせてくれる。


7.BLACK COUNTRY, NEW ROAD 『ANTS FROM UP THERE』
Ants From Up There [解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック追加収録 / 国内盤CD] (BRC685)
前にも書いたように1stには全然ハマれなかった。個人的には1stと本作は全然違うように感じるけど、本作ラストを飾る「Basketball Shoes」は1stのヴァイブスと2ndのヴァイブスを併せ持つ楽曲と解釈するのが正しいのかな。
とにもかくにもリリース数日前にヴォーカル(≒メインソングライター)の脱退発表って尋常じゃないし、それ以来、本作は不可侵の輝きを放つことになったんだと思う。だって、もう答え合わせの利かない音楽だもんね。本作の美しい楽曲たちを末永く愛聴していこう。
ちなみに、2023年4月の単独来日のチケットは押さえてある。これはこれで楽しみ。


8.山下達郎 『SOFTLY』
SOFTLY (通常盤)
新録曲はわずかな数にとどまるそうだけど、既発曲も「あ、聴いたことある」程度の摂取しかしてこなかったら、個人的には純然たる新作として大いに楽しめたなあ。おかげさまで当選してツアーも観に行ったけど、完成されたセットリストに新しめの曲が入り込む余地はあまりないらしく、その意味では本作を聴き込んだ甲斐はあんま感じられなかったけども。まあ、(最大公約数的には)求められているのはそこじゃないっていう自覚が強い人なんだよね。


9.CRAIG DAVID 『22』
22 [DELUXE]
この人のバイオグラフィーを振り返ると、やっぱ2016年作での復活劇が大きなトピックになると思うんだけど。実はオレはその2016年作をリアルタイムで聴いてなくて、華麗なカムバックを果たしたことを知らずに1~2年後になって「えっ、Craig David、今、こういう状況なの?!」って驚いたカンジ。んで、2019年の来日公演で8年ぶりにライヴを体験して超楽しかったな。カムバック以降は順風満帆に活動してる印象だし、今回のアルバムもその神通力そのままに力作になっとる。
ってか、せっかくだから、Deluxe盤のほうを買おうと思ってスタんばってたら一向にリリースされないでやがんの。1~2ヶ月待たされて「ぶっちゃけ、Deluxe盤って実在しないんじゃないの?」と諦めかけてたころにようやく出た。純粋に曲が5曲ほど多いのかな? んで、この評価はStandard盤として評価するのかDeluxe盤として評価するのかっていうと、、、うーん、いや、別に決めてない。w どっちだとしても、全編に渡って極めて機能的かつ高品質でサイコーだわ。また、ライヴ観たいな。バンドセットでもDJセットでも、どっちでもOKっす。


10.BEYONCE 『RENAISSANCE』
RENAISSANCE
聴き始めは全然ピンとこなかったなあ。フロアで鳴らされるためのアルバムだと考えたら自分にはカンケーないような気がしてハマれなかったんだろうなあ。聴き込むうちに個々の楽曲の魅力がわかってきて好きになったというカンジ。でも、好きなのはアルバム前半なんだよな。アルバム全体のハイライトである「Virgo's Groove」までで一区切りついたような気になっちゃって。アルバム後半の魅力がわかってくると、このアルバムの評価は大きく変わってくるんだろうけどね。実際、各メディアの選ぶAOTYでは軒並み上位に。
3部作の1枚目だとアナウンスされてる本作だから、次作はそう遠くない将来に出てくるのかな。オレみたいな人間はそれまでの間も本作をより深く聴き込んでおいたほうが良さそうだね。


次点:HORACE ANDY、WONK、KENDRICK LAMAR、TRICERATOPS


現時点でフィジカルの出ていないNASとLITTLE SIMZは対象外にした。もちろん、ストリーミングではちょこちょこ聴いちゃったけど。両作品とも素晴らしいよね。素晴らしいからこそ無理矢理AOTYに間に合わせるためにスピード消費すべきじゃないんだよ。フィジカル出たら、じっくり大切に聴き込むよ。
あとは、まあ、MAXWELLのアルバムが2022年も出なくてビックリしたっていうとこかな。1年前の時点では今度こそ本当にアルバム出るフラグ立ったって感じちゃってたからね。引き続き、気長に待てってことよね。