2023年総括 その1

<Albums>

1.THE ROLLING STONES『HACKNEY DIAMONDS』
Hackney Diamonds
18年ぶりの新作ということだけど、自分はその前作『A BIGGER BANG』を持っていない*1ので、18年ぶりという感覚を共有しているわけではない。というか、リアルタイムで新作を聴くこと自体が初めてってことか!
とにもかくにもAndrew Wattの仕事ぶりに最大級の賛辞を送らないわけにはいかないだろう。豊富にあった楽曲のストックから「ロイヤルストレートフラッシュになる組み合わせを彼が選び抜いたのだ」という証言にもシビれた。
収録曲のうち何曲かは「Mickのソロ」のほうが近いっていう指摘も散見されたけど、Mickのソロ諸作もKeithのソロ諸作も通ってないから、そのあたりわからず。でも、そのとおりだとしても、そうじゃなかったとしても、やっぱり総じてクオリティが高いのは事実で、その意味で感服。
こうなったら、来日公演観たいってのが人情というものだけども。例の「東京ドーム10日間押さえられないと実現しない」って話を聞いて無力感に襲われる。
ところで、18年前の2005年といえば、「Sweet Sounds Of Heaven」に参加したStevieの(目下のところ)最新作もその年に出たもので。Stevieにも傑作でのカムバックを果たしてもらいたいものだわね。


2.ARLO PARKS 『MY SOFT MACHINE
MY SOFT MACHINE
2022年のFUJI ROCKの配信で観た感想としては「いまいちピンとこなかった」と書いたんだけど、その理由はハッキリしてて。アルバム『COLLAPSED IN SUNBEAMS』の作風とArlo Parks本人の(現在の)モードとに乖離があって、しっくりこなかったわけなんだよね。そういう意味でいうと、今回のアルバムは本人のモードがそのまま投影されてて100%しっくりきた。なおかつ楽曲のクオリティが総じて高く、文句なしの名盤認定。
前作も詩作面で固有名詞の多用が目を引いたけど、今作は今作でDEFTONESの名が登場してファンとしてはなんか嬉しかったな。あと、これはアルバムとはまったくカンケーない話なんだけど、来日時、東京公演の前夜にHMVインストアライヴあったんだよね。それ観に行ったら、なんと本人ALTERNATIVE TENTACLESのTeeシャツ着て*2登場。あなた、そっち方面まで守備範囲ですか。感服。


3.ZULU 『A NEW TOMORROW』
A New Tomorrow [Analog]
昨年のSOUL GLOに続き、こちらも新しく聴き始めたバンド。POWER VIOLENCEと呼ぶにはあまりにもメタリックすぎると思うけど、こんなクオリティの高い代物にケチをつける気にはならない。アルバムとしての完成度にも舌を巻く。メタリックなハードコアとSOUL(あるいはレベルミュージック)を交互に織り成す構成は、確かにBAD BRAINSに由来するものとも思えるけど、個人的にはHEALTH HAZARDとかE.TOWN CONCRETEとかの仕掛けもちょっと想起したな。
中心人物のAnaiah Leiは兄弟デュオTHE BOTSとして2014年のサマソニに出演してるらしいね。今調べてみると、午前中のMOUNTAIN STAGEに出てたっぽいな。その時間だったら、オレはMARINE STAGEでVINTAGE TROUBLEを観てたと思われ。まあ、未来のZULUだってわかってたら絶対そっちを選んでたけどね。


4.GEZAN 『あのち』
あのち
やっぱり、サウンドよりも言葉が重要な作品だと思う。言葉のほうに共感できなかった人は本作を全然評価しなかっただろうなあ。J-POPやロッククラシックスのフレーズが全体に散りばめられてて、それらがレジスタンスとノスタルジーに転化されてる。個々の楽曲でいったら弱いかもしれないけど、ハナからそんな聴かれ方は想定してないとも思える。アルバム全体を聴き終わったときに、ネガティブな感情よりもポジティブな感情のほうが充填されるのは素敵なことよね。
多分、10年前の自分にだったら刺さってなかったかもしれない。自分はマヒトさんよりだいぶ歳を取っている人間だけど、若い世代のメッセージに感化されるような歳の取り方ができて良かったとは思ってる、少なくとも。


5.CLEO SOL 『HEAVEN』
Heaven
予想に反して(?)SAULT本体はおとなしくしてたものの、構成員Cleo Solのアルバムが9月に2枚連続投下された。
そりゃ確かにInfloはこの4年間世界中の音楽ファンを驚かせ続けてきたし、今回の2枚も彼によるプロデュースが光っている。もちろん、それには大いに賛同する。でも、一方で、Cleo Solっていう人の歌は(楽曲は)それ自体がとても魅力的で(単に「オレ好みだ」とも言い換えられる)、たとえInfloとの邂逅を果たしていなかったとしてもイチSSWの好盤として多くの人に作品が愛聴されていたであろうと思える。そう思わせてくれる楽曲の魅力をより強く感じるのが本作『HEAVEN』のほうだったので、こちらを『GOLD』よりも上位とした。多分世間的には逆で『GOLD』のほうが評価高いっぽいのかな。


6.IGGY POP 『EVERY LOSER』
エヴリ・ルーザー
STONESに続いて、こちらもAndrew Wattワークス。プロデュースのみならず、Chad SmithやDuff McKaganといった演奏陣まで含めOzzyの近作2枚とはほぼ同じ布陣ということになる。Ozzyのアルバムは去年のベストテンにも一昨年のベストテンにも入れなかったな。全然悪い作品ではないけど、ぶっちゃけOzzyに必要なのは「良きプロデューサー」以前に「良き相棒ギタリスト」の存在だと思う。
対して、Iggyの本作は楽曲そのものの充実度がかなり高いと思う。正直オレはIggyのキャリアを全然知らない(マジで『IDIOT』と『LUST FOR LIFE』しか知らない*3)のだけど、世間の求めるIggy像に合致したベクトルの楽曲がアルバム一枚分ちゃんと揃ってて素敵なアルバムだなあというカンジ。
さらにアートワークがPettibon画伯というのもポイント高し。まあ、人の顔を描いたアートワークじゃないから、そこまでPettibon感全開じゃないけどね。


7.iri 『PRIVATE』
PRIVATE [通常盤] [CD]
あいかわらずリリースペースが衰えない。個人的には前作『neon』を最高傑作だと思ってるので、それとの比較でいえば肩の力が抜けた作品だと感じる。でも、『neon』の後に(コロナ禍明けに)こういう風通しのいいアルバムをつくるのは理にかなってるし、完全に支持する。
楽曲面で重要なのは、海外のクリエイター*4とのコラボレーションを含むことかな。どんどん海外にも進出したらいいと思う。100%支持する。


8.GRAPEVINE 『ALMOST THERE』
Almost there [通常盤] [CD]
前作はとてもいい作品だと思ったけれど、大豊作の年だったのでベストテンにランクインさせられずじまい。
んで、今作。前作以上に気に入ってる、個人的には。ただ、一方で、前半にイイ曲を集中させすぎてる印象があって、後半が地味に感じてしまう。だとしたら、曲順を変えただけでも随分感じ方が違うのかなあ?
直接的な言葉づかいを多用したという田中氏の証言どおり、今作の詩作面は(GRAPEVINE史的には)斬新な限り。それがまたストレートな亀井曲と好相性なのかも。


9.LE SSERAFIM 『UNFORGIVEN』
LE SSERAFIM - UNFORGIVEN 1st Studio アルバム+ギフトフォトカード [韓国盤] ル セラフィム (DEWY SAGE ver.)
まあ、活動全体を見ると無駄なこともやっているように映るけど(音楽なのか芸能なのか、みたいな話)、作品そのもののクオリティは高いと思う。捨て曲もあると思うし、「もっとできるだろ」って思わないでもないけど、まあ、伸びしろと捉えて追いかけてみようかな。


10.CLEO SOL 『GOLD』
Gold
というわけで、『HEAVEN』よりも下に本作を。『HEAVEN』の項で書き忘れただけなんだけど、Cleo Sol本人の諸作にしろ、SAULTの諸作にしろ、歌詞が比較的平易な英語で綴られているので、英語力の低い私たち日本人もグッとくるポイントが多めがち。
コレクティブであるSAULTよりは、個人であるCleo Solのほうが来日の望みがありそうな気はするけど、どうなんでしょ。マジで観たいぞ、ライヴパフォーマンスを。


次点:JORJA SMITH、METALLICAMR.CHILDREN


2020年以来「コロナ禍で興行のほうがストップしたからこそ、全ミュージシャンはスタジオに入らざるを得ず、結果アルバムが量産されることになるのだ」という言説とともに、その言説どおりの大豊作な年が続いたわけだけど。個人的には、コロナ禍明けとともに大豊作は一段落したのかなと思える年だった。でも、まあ、そこは個人差があるだろうし、好きなアーティストのリリースが2023年にもたくさんあった人にとっては、「今年も充実!」ってカンジだったのかもしれないけどね。


めちゃくちゃ期待値が高かったJorja Smithは次点という位置づけに。アルバム前半は強力なのだけど、後半が弱く感じてしまう。後半にもパンチのある曲があれば、なあ。Kelela*5Corinne Bailey Raeも同じようなカンジ。「前半は良くても後半がなあ」って。
METALLICAはねえ、いかんせん「曲もアルバムも長いよ」っていう。あんなに長い必然性をまったく感じないので。ひとつひとつのリフには何も文句はないんだけどね。リードトラックのサイズ感の曲を10曲集めただけの潔いアルバムのほうが、あの黄色の斬新なアートワーク*6にも合ってたんじゃないかな。とはいえ、ライヴはもちろん観たい。『M72 WORLD TOUR LIVE FROM ARLINGTON, TX』ももちろん映画館に観に行った。実現するといいな、来日公演。


そのほか、よく聴いたアルバムはこちら。(まあ、新譜じゃないのも入ってるけど、、、)


さて、2023年もMaxwellのアルバムは出なかったな。2024年は出るんですか? まあ、死ぬまでに聴ければいいか。w

*1:18年前っていうとすなわち2005年のことで、確か憎きCCCDがかろうじて生き残ってた時代だったのかな、その後中古盤で見かけても頑なに買わなかった気がする

*2:同じ日と思われる映像 ⇒ GRAND MARQUEE presents “Arlo Parks” スペシャルライブ!

*3:『NEW VALUES』のLPを所有してはいるんだけど、全然針落としてない

*4:私はedblのことを知らず、本作で初めてその名を知った

*5:ただ、Kelelaの9月の来日公演は打って変わって超サイコーだった!

*6:真っ先に思い出したのはNOFXの2006年作だったよね

LOUD PARKのチケット

発券してきたー。
今回、券種によるゾーンレイアウトのことが話題になってるよね。オレは一般のほうのチケットなんだけど。まあ、前のほうで観たいという気持ちがないから、別にいいか。きっと、スクリーンの設置あるしね。


PANTERAに関しては、スクリーンすら見ずに、ただひたすらAbbott兄弟に想いを馳せて音に身を任せればいいのかも。


KREATORのほうは、スクリーンを拝みつつ、バックドロップも拝みつつ、ってカンジかな。新作のアートワークがドデカいバックドロップになって掲げられたら壮観だろうなあ。
昔は1曲でも多く『PLEASURE TO KILL』の曲を演ってほしいみたいな気持ちがあったけど、今は「現在のKREATORを拝むことに意味がある」っていう境地に至ったわね。21世紀になって以降、あれだけの存在感を放ち続けているのは本当に偉大なことだもんな。






そういえば、海浜幕張の手前に新駅が誕生するそうね。混雑を避けたいなら敢えてそっちを利用するのもアリ?

19周年

このブログ、19周年。あと1年で20年かあ。まあ、でも、これぞ絶海の孤島ってカンジはする。


最初のエントリで書いたface to faceの7"だけど、あれから19年経っても現物は見たことなし。ホントに存在するの?っていうレベル。まあ、Discogsによると7"ではなくてCDだという話なんだけど。
まあ、でも、現物を見たことがなくても、曲自体はこうしてフツーに聴けちゃうわけで、こういう未来がやってくるとは思ってなかったわね、19年前には。

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PUNKSPRINGはあるけど、face to faceはこない。NOFXもこない。うーーーん。
せめてBAD RELIGIONだけで単独公演やってほしかったなあ。

2022年総括 その2

<Tunes>

1.SAULT 「ANGEL」

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2.KENDRICK LAMAR 「THE HEART PART 5」

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3.私立恵比寿中学 「青春ゾンビィィズ」

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4.NAS 「REMINISCE」

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5.LE SSERAFIM 「FEARLESS」

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SAULTは、そろそろ2022年の総括を考え始めてもおかしくないぐらいのタイミングでのアルバム一挙5枚リリース。想像の斜め上どころの騒ぎじゃなくて、もう呆然として半ば涙目になった。w まあ、実際のところ、リスナーの立場として2ヶ月で5枚を咀嚼するなんてできないんでね。アルバム部門では対象外にした。これから一枚一枚じっくり聴き込むことにするよ。って言ってるうちに、次のが出たりして。w
でも、この「Angel」を収録した『X』なら1曲のみだから、当然咀嚼できたよ。なんなら咀嚼どころか一聴した段階ですでに喰らってたけどね。あの『AIR』の後がコレだからね、それはそれは強烈な一撃だった。


KENDRICK LAMARはアルバム部門ではランクインしなかったけど、この曲にはもちろん興奮したクチ。アルバムリリースの数日前にこんな曲が(衝撃のMVとともに)ドロップされて、「こんな曲が10曲も入ってたらヤバい」と思ったところに、実際にはアルバムには(フィジカルには)未収だったので、そりゃまあ、アルバムのほうが霞んだのは否めない。初期から追っててThe Heartシリーズも押さえていた人たちは「あ、これはアルバムとは別やな」ってちゃんと察知してたらしいけど、オレはそれをわかってなかったからなあ。
この曲自体に関して言えば「I Want You」がそもそも超名曲っていう土台ありきだけど、構成も含めて完璧な一曲だな、と。


<Live Performance>

1.THE BLACK CROWES @ 立川ステージガーデン 11/6
2.LITTLE SIMZ @ KANDA SQUARE HALL 9/21
3.DISCHARMING MAN @ 新代田FEVER 6/25
4.QUICKSAND @ 渋谷GRIT 11/12
5.FISHBONE @ 恵比寿ザ・ガーデンホール 8/19
次点:black midi、崎山蒼志、DOS MONOS


CROWESは2 DAYS観に行ったけど、2日目のほうを選出しようかな。純粋に2日目のほうが良席だったから、っていうだけ。
本来的には、2 DAYS観に行ったらカブりなく20曲ずつとか聴けちゃったりして多幸感に包まれるのがCROWESのライヴなんだけど。でも、今回は1stの完全再現ライヴだから、そこは固定なわけで。日替わりで聴けた曲はわずかなので、むしろ損してるともいえるのかも。それに長さもね。3時間演ることも珍しくないバンドだから、今回は相当短く感じてしまうね。
まあ、それでも、思い入れに勝るものはない、ってことよね。こういう企画じゃなくても全レパートリー演奏する可能性のあるCROWESだから、超レアな曲があったわけじゃないけど、個人的ハイライトは「Hard To Handle」と「Struttin' Blues」かなあ。


LITTLE SIMZは、まあ、ODD BRICKのときのほうが広々と観やすかった(しっかり雨天だったけど)のは確かなんだけど、やっぱり、曲数が3曲多かった単独公演のほうを選出しようかな。その3曲っていうのが「One Life, Might Live」と「Little Q, Pt. 2」と「How Did You Get Here」で、全部好きな曲だからね。
バンドセットではなかったけど、それが物足りなく感じたかというと、決してそんなことはなく。実に素晴らしいショウだった。


DISCHARMING MAN観たのは2年半ぶりかな。配信ライヴはあったけれど、ナマで観るのを心待ちにしてた。なんたって傑作アルバムのレコ発。聴きたい曲いっぱい聴けて嬉しかった。特に「February」な。泣いたわ。
でも、今のDISCHARMING MANはあのアルバムの時点よりも先に進んでるのよな。新曲もカッコイイ曲ばかりだった。どれもリズム面で今のDISCHARMING MANらしさを提示してる(もちろん、詞作面でも)。そして、アンコールラストで演った「因果結合666」。信じられないぐらい号泣してしまった。
で、この公演がめでたく映像作品化。嬉しすぎるっつーの(くしこさんの脱退は寂しいが)。


完全にQUICKSAND後追い世代のオレは、前回の来日が初めて観るナマQUICKSANDだったんだけど。ギター一本の状態でパフォーマンスされて不満が募るカンジだったのはすでに書いたとおり。
そして、念願かなってギター二本の状態で来日を果たしてくれた。セットリストも『SLIP』の曲いっぱい演ってくれたし、『MANIC COMPRESSION』の個人的に好きな曲も押さえてくれたし、言うことなしだったわ。んで、オレが観に行った日はアンコールの1曲目が「Too Official」だった! もう死んでもいいや。


個人的にはこのFISHBONEの単独公演が「2年ぶりに観る海外アーティストのライヴ」だったんだよね。それだけに感慨もひとしおだったな。
セットリスト的には「せっかく2000年以降も高品質な作品をリリースしてるのに、90年代までの曲しか演らないのはもったいないなあ」と思わなくもないんだけど、実際あれだけ名曲連発されたらもう抗えない。演奏面含めてサイコーだった。初共演は89年だったと振り返る谷中さんのMCもグッときたわ。

<Films>

1.戦慄せしめよ
2.バビロン
3.ダイナソーJr./フリークシーン
4.スパークス・ブラザーズ
5.私が殺したリー・モーガン
次点:Documentary of artless―飾らない音楽のゆくえ―


ここに挙げた作品とはまったく関係のないお話をひとつ。
一番楽しみにしてた『ロックン・ロール・サーカス 4Kレストア版』を見逃した。観る気満々だったのに。Bunkamuraで観るつもりだったけど、「当館では2K上映です」って書いてあって、せっかくだから4K上映の劇場で上映されるまで待とうと思って。そしたら、封切られる劇場どこも「2K上映です」って書いてあって、、、結局そのまま上映期間終わった。 は? 4K上映はどこでやってたの? 関東ではやってないってこと? この怒りをどこにぶつけたらいいものか。
なんて言ってたら、1月に上映あるみたい。(たとえ2K上映だったとしても)観てこようかな。

2022年総括 その1

<Albums>

1.black midi 『HELLFIRE』
Hellfire
個人的には前作をそんなに評価しなかったのよね。10枚選出してギリ10番目ってなカンジで。その前作のなかで一番気に入ったのはやっぱりリードトラックだった「John L」なんだけども。その「John L」を手がけたプロデューサーが今回はアルバム全体をプロデュースしてるんだそうで。それが理由なのかそうじゃないのかわからないけど、「John L」バリに気に入った曲が満載のアルバムだったわ。特に序盤、「Welcome To Hell」までの流れが完璧すぎて圧巻。
Mattは完全に脱退しちゃったのかしらね。でも、今回もサポート2名の働きが素晴らしいじゃないのよ。特にサックスは超重要。だからこそ、来日公演もサックス込みで観たかったというのが本音だったりする。


2.THE BOO RADLEYS 『KEEP ON WITH FALLING』
KEEP ON WITH FALLING
オレは完全に後追い世代なので、新作をリアルタイムで聴くこと自体が初めてなんだけども。ってか、再結成の報が届いたときMartin Carrはいないということが併せて伝えられて(往年のファンも)みんなズッコケたと思うけどね。メインソングライターいないんだもんね。でも、フタ開けてみたらイイ曲ばかりで驚いた。珠玉のメロディ、変わらないSiceの歌声。これ以上何を望むか。
「凄い音楽」って評価軸と「良い音楽」って評価軸が別々に存在してる気がするし、AOTY的な土俵では前者が物を言いがちなのかもしれないけど、後追い世代のオレが真っ先に後者の評価軸で本作を称賛したいって思ったんだよね。


3.宇多田ヒカル 『BADモード』
【オリジナルステッカー付】 宇多田ヒカル BADモード 【 生産限定盤 】(2LP)
世界的な成功という意味では過去最高到達点かね。本当は個人的な趣味でいえば、3年前の既発曲とかまで含めてアルバム化されるより新録の楽曲をたくさん聴きたい派だけど、まあ、このクオリティなら文句も言えなくなる。基本的には、時系列的に言って最近録った曲ほどイイっていう印象なので、次回作も最高クオリティになるんだろうなと。
でも、どちらかといえばライヴ活動の動きのほうに興味があるかな、今は。というのも、本作のオマケとして収録されたAIR STUDIOSでのライヴがめちゃくちゃ良かったからね。アルバム本編より充実してると感じるぐらい。


4.iri 『neon
neon [通常盤] [CD]
彼女の作品に駄作はひとつもないと思っていて、その意味で高値安定なんだけど、今回は本当にネクストレベルに達した一枚だと思った。アルバムタイトルとアートワークはサナギを意味してるらしいんだけど、「これでサナギなのかよ、もうバタフライじゃんかよ」って思える会心作。シングル単位の既発曲も入ってるし、なんなら前作EPの収録曲まで入ってるけど、寄せ集め感は皆無でアルバムとしての構成がお見事。ラストを「The game」みたいな曲で終わらせる心憎さまで含めて完璧だわ。


5.SOUL GLO 『DIASPORA PROBLEMS』
Diaspora Problems
TURNSTILEにどうしても興味が持てないオレも、コレにはすぐ飛びついた。EPITAPHからのリリースだし、完全にマスに聴かせることにもフォーカスしたアルバムだと思う。でも、セルアウトじゃない。ハードコアパンクとしての強度も相当なものだから。音楽的造詣の深い人たちのようで、本作にまつわるインタビューも興味深く読めたわ。


6.SUPERCHUNK 『WILD LONELINESS』
Wild Loneliness
「ゲスト参加多数」が本作のキーワードだから、ライヴで聴かれる音楽性とは違うけど完成度はピカイチ。Mac自身もお気に入りとしてタイトルトラックを挙げていたけど、オレもそれが一番好きだなあ。サックス切り込んでくる瞬間が鳥肌もの。その他にもイイ曲目白押しで「やっぱ、強いなあ」と思わせてくれる。


7.BLACK COUNTRY, NEW ROAD 『ANTS FROM UP THERE』
Ants From Up There [解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック追加収録 / 国内盤CD] (BRC685)
前にも書いたように1stには全然ハマれなかった。個人的には1stと本作は全然違うように感じるけど、本作ラストを飾る「Basketball Shoes」は1stのヴァイブスと2ndのヴァイブスを併せ持つ楽曲と解釈するのが正しいのかな。
とにもかくにもリリース数日前にヴォーカル(≒メインソングライター)の脱退発表って尋常じゃないし、それ以来、本作は不可侵の輝きを放つことになったんだと思う。だって、もう答え合わせの利かない音楽だもんね。本作の美しい楽曲たちを末永く愛聴していこう。
ちなみに、2023年4月の単独来日のチケットは押さえてある。これはこれで楽しみ。


8.山下達郎 『SOFTLY』
SOFTLY (通常盤)
新録曲はわずかな数にとどまるそうだけど、既発曲も「あ、聴いたことある」程度の摂取しかしてこなかったら、個人的には純然たる新作として大いに楽しめたなあ。おかげさまで当選してツアーも観に行ったけど、完成されたセットリストに新しめの曲が入り込む余地はあまりないらしく、その意味では本作を聴き込んだ甲斐はあんま感じられなかったけども。まあ、(最大公約数的には)求められているのはそこじゃないっていう自覚が強い人なんだよね。


9.CRAIG DAVID 『22』
22 [DELUXE]
この人のバイオグラフィーを振り返ると、やっぱ2016年作での復活劇が大きなトピックになると思うんだけど。実はオレはその2016年作をリアルタイムで聴いてなくて、華麗なカムバックを果たしたことを知らずに1~2年後になって「えっ、Craig David、今、こういう状況なの?!」って驚いたカンジ。んで、2019年の来日公演で8年ぶりにライヴを体験して超楽しかったな。カムバック以降は順風満帆に活動してる印象だし、今回のアルバムもその神通力そのままに力作になっとる。
ってか、せっかくだから、Deluxe盤のほうを買おうと思ってスタんばってたら一向にリリースされないでやがんの。1~2ヶ月待たされて「ぶっちゃけ、Deluxe盤って実在しないんじゃないの?」と諦めかけてたころにようやく出た。純粋に曲が5曲ほど多いのかな? んで、この評価はStandard盤として評価するのかDeluxe盤として評価するのかっていうと、、、うーん、いや、別に決めてない。w どっちだとしても、全編に渡って極めて機能的かつ高品質でサイコーだわ。また、ライヴ観たいな。バンドセットでもDJセットでも、どっちでもOKっす。


10.BEYONCE 『RENAISSANCE』
RENAISSANCE
聴き始めは全然ピンとこなかったなあ。フロアで鳴らされるためのアルバムだと考えたら自分にはカンケーないような気がしてハマれなかったんだろうなあ。聴き込むうちに個々の楽曲の魅力がわかってきて好きになったというカンジ。でも、好きなのはアルバム前半なんだよな。アルバム全体のハイライトである「Virgo's Groove」までで一区切りついたような気になっちゃって。アルバム後半の魅力がわかってくると、このアルバムの評価は大きく変わってくるんだろうけどね。実際、各メディアの選ぶAOTYでは軒並み上位に。
3部作の1枚目だとアナウンスされてる本作だから、次作はそう遠くない将来に出てくるのかな。オレみたいな人間はそれまでの間も本作をより深く聴き込んでおいたほうが良さそうだね。


次点:HORACE ANDY、WONK、KENDRICK LAMAR、TRICERATOPS


現時点でフィジカルの出ていないNASとLITTLE SIMZは対象外にした。もちろん、ストリーミングではちょこちょこ聴いちゃったけど。両作品とも素晴らしいよね。素晴らしいからこそ無理矢理AOTYに間に合わせるためにスピード消費すべきじゃないんだよ。フィジカル出たら、じっくり大切に聴き込むよ。
あとは、まあ、MAXWELLのアルバムが2022年も出なくてビックリしたっていうとこかな。1年前の時点では今度こそ本当にアルバム出るフラグ立ったって感じちゃってたからね。引き続き、気長に待てってことよね。